霊能者秘密手記 私が手掛けた心霊事件 生き霊の怨念が関係した鑑定エピソード ②
霊能者秘密手記 私が手掛けた心霊事件
愛染に在籍する霊能者たちがこれまで手掛けてきた豊富な鑑定事例の中から、とくに心霊体験や霊障などのミステリアスな要素が強くからんだ相談を選び、その解決までの経緯などをご紹介するコーナーです。
決められたテーマの下に毎回、先生からの短い手記の形式を取り、その内容を順次公開させていただきます。本格的な霊能鑑定ならではの、不思議と恐怖に溢れたエピソードをお楽しみください。
生き霊の怨念が関係した鑑定エピソード ②
恋愛や結婚、あるいは公私に渉る対人関係の中で特定の相手から恨みを買ったり、逆にひどく恨んだりといったことが悩みのきっかけとなるのはよくある話です。しかしそこからさらに問題が泥沼化すると、相手の念が凝って飛来する生き霊の障りが起きることもあり、その被害は健康や仕事、恋愛などの支障として現れたり、場合によっては深刻な心霊現象を引き起こすこともあると言われます。
実際に当鑑定所ではその手のトラブルを抱えてご相談になる方が後を絶ちません。今回はそんな生き霊の被害に関する相談事のエピソードを集めました。
バーカウンターの内を横切る少女
私は基本的にお客様と直接対面する形での鑑定はやっていないのですが、親しい友人や知人に頼まれた時に限っては、そこから紹介されてきた第三者の相談事を受けることがあります。
一昨年、小さなバーを経営する中年男性からの依頼でお祓いの仕事をしたのもそのパターンで、依頼主の店には私の身内の1人が、日頃から常連客として通っているという間柄でした。まずは電話で事情を伺ったところ、ここ半年間ほど店内に幽霊らしき女が続けざまに現れるようになり、それが原因で客足が遠のいているとのことで、何はともあれ実際に来店して現状を見て欲しいと請われました。
そのお店は街中の雑居ビルの地下1階にあり、10人掛けのバーカウンターにボックス席が6つというこの手の業態にしては割合と広めの造りで、そこで働く従業員は自らマスターも勤めるオーナーとアルバイトの青年が数名。そのうちの1人は幽霊と遭遇するのが嫌で、つい前月に辞めてしまったと聞かされました。
またそこに出没する女の霊の姿は、10代の半ばと思われる痩せた少女でいつもピンクの花柄がついたワンピースのような服を着て、ヘアスタイルはポニーテールと、冒頭からかなり詳しい目撃証言が得られました。
「とにかく最近はもう、毎晩のように現れますからね。嫌でも目に焼き付いちゃいます」と、マスターは苦虫を潰したような顔でつぶやきました。「出る時間帯はマチマチなんですが、どちらかというと日付が変わる頃が多いかな。カウンターでお客と接している私らのすぐ後ろを、端から端へスーッと横切ってそのまま消えたり、そうかと思えば誰もいないボックス席にいきなり座ってたり、まあその日によって出方も色々です。ただしいつも意表を突いた場所から出るから、私らはもちろん、たまたま居合わせる客にとってもすごく心臓に悪い存在ってわけなんですよ。ついこの前、トイレに出た時にはちょうど用を足していた年配のお客さんが、持病の発作を起こして倒れちゃってね。真夜中に救急車を呼ぶやら大騒ぎでしたよ」
また時には、カウンターの奥から入る小さな厨房と休憩スペースに現れることもある、とのことでした。すでに辞めていたバイトの男性はそこで休んでいる最中、いきなり白い手が背後から伸びてきて、抱きつかれるような形で上から覗き込まれたと。当人にはそれがかなりのショックだったようで、翌日すぐに「この仕事を辞めたい」と言ってきたそうです。
私が「皆さんのうちの誰か、その少女の顔に見覚えがある人はいないのですか?」と訊ねると、そこでのバイト歴が一番長い男性がおずおずと進み出て、「はっきりとは言えないんですが、前にお客さんとして来ていた女の人に顔付きがよく似ているんです…」と話し始めました。
その女性は、2年くらい前までほぼ常連と言っても良い頻度で来店していた30代後半のクラブホステスで、自分の店の勤めがはねると、バーカウンターの端にひっそりと座って、仕事の疲れを癒すように過ごしていたそうです。口数がとても少ない人だったので、プライベートに関してはほとんど分からない。でも、たしか中学校に通う一人娘がいるという話を聞いたことがある、と彼は言っていました。
「僕、その娘さんじゃないかと睨んでいるんです。とにかく若いか年増かの差だけで、目鼻立ち自体はほぼ同じ感じですから。もしかしたら、病気か何かでその女の子が死んじゃって、お母さんを探しにこの店に来ているのかなって…」
バイトの彼がそう主張すると今度はマスターが言葉を継いで、「いえね、コイツがあんまりそう言うものだから、そのホステスが勤めているって店にわざわざ行ったこともあるんですよ。そうしたら、もう2年も前に辞めているって。その後の足取りは分かりません」
「2年前というと、そのホステスさんがこの店に来なくなったのと同時期ということですか?」
「そういうことになりますね。まあ、普通に考えれば勤め先を変えるついでに、どこかへ引っ越したとかね」
一通りの話を聞き終えた後、マスターとスタッフ全員にはいったん店外へ出てもらいました。1人きりになった店の中、意識を集中して霊視を開始しました。初めはそれらしい波動をキャッチできずにいたのですが、そのまま15分ほど根気よく続けていたところ突然、厨房兼休憩スペースの方で意識体が出現する様子が感じ取れました。それで急遽そちらへ回ってみると、男性陣が口々に証言した通りの少女が、壁に半分埋まっているような状態でぼんやりと所在なげに佇んでいたのです。
彼らが言っていたように、年の頃は15~16歳くらい。喜怒哀楽の表情が失せている、能面のような容貌でした。また顔立ちそのものは端正とも言えましたが、かなりやつれている様子も見て取れ、それが見ようによっては恨みを抱いた幽霊の形相にも見えたのでしょう。さらにその身体全体を包み込むエネルギーの流れが、ある種の特徴的な形状を成していたので、亡者の霊ではないこともすぐ分かりました。つまりそれは、一般に生き霊と呼ばれる存在形態だったわけです。
少女の生き霊も一拍おいて私のことを認識したようで、顔を間近に寄せながら「ジュンヤは、ジュンヤはどこ?」と同じ言葉をうわごとのように繰り返しました。すかさず「ジュンヤとは誰ですか?あなたはどこから来たのですか?」と問い返したのですが、こちらの質問に対する返事はありませんでした。
生き霊の場合、生身の本体とつながっている部分がどこかしらに見られるもので、それは例えば身体の一部から空中へ伸びている細い光の紐であったり、同じく網の目状に広がる結節であったりと様々なのですが、いずれにしても物質世界に近い次元の粗い粒子で形成されているので、比較的可視化しやすいという特徴も有します。また、その分離した幽体に活力を補給している肉体の所在も特定しやすく、このケースでもすぐに本体がいる場所までたどることができました。
結論から申し上げると、この霊の本体というのは2年前から急に店へ来なくなった常連客のホステスさんでした。それが自分の少女時代の姿を取って、執着を持つ場所に現れ続けていたのです。また霊視によってトレースしたところ、本人は大きな病院内の病室らしきベッドに横たわっており、かなり深刻な状態にあることも分かりました。それが自ら生死の境をさまよいながら、必死に生き霊を飛ばしていたというわけです。無自覚にやっていることとはいえ、彼女がそこまでする目的は一体何だったのか…?
やがてマスターとスタッフが戻ると、まず私は「ジュンヤという名前に聞き覚えはありますか?」と訊ねてみました。すると全員が口を揃えて、「聞き覚えも何も、それって先月辞めたバイトと同じ名ですよ」と。この一言をきっかけにして、謎の心霊現象の全容が明らかになったのです。
まず問題の女性が頻繁に店に通っていた時期のどこかの時点で、彼女はジュンヤというバーテンダーと男女の関係に陥ったようです。マスターや他の従業員は「まるで気がつかなかった」と言っていましたから、店内ではお互いにそういう素振りを見せないように、できるだけ気を遣っていたのでしょう。
その後、何かの原因で2人は破局し、女性も勤め先の店を辞めてしまったわけですが、後で生き霊になって出没したくらいですから、よほど理不尽な捨てられ方をしたのだと思います。現時点での自分ではなく、わざわざ少女時代の姿で現れたという事実に照らせば、女性の側がかなり年上という年齢差が破局の引き金になったのかもしれません。
いずれにしても彼女は半年近く前に重い病を発し、以後は入退院を繰り返す生活。ちょうどその頃から生き霊を飛ばし始めたようでした。そんな私の説明を聞いて顔色を変えたマスターは、その場でジュンヤの携帯に連絡。激しい口調で問い詰めると、たしかに霊視通りの経緯があったことを、渋々ながら認めました。
原因が明らかになるにつれ、さすがに一抹の同情心が湧きました。しかし、売り上げが下がり続ける現状は何とかしなくてはいけません。そこで店の内部とその入口に強力な結界を張り巡らせました。生き霊が入り込もうとすると、人工的な想念の壁に弾き飛ばされて幽界の迷路に迷う仕組みです。
本来ならば入院中の女性を説得し、生き霊を飛ばさないように諭さなくてはいけないのですが、そうした根本的解決は逆におよそ現実的ではありません。ですから私個人に限らず多くの専門家は、生き霊の障りに対してこうした対症療法的な措置を講じるのです。その後は少女霊の出現もピタリと止み、マスターは胸を撫で下ろしているようです。
以上、生き霊が実年齢と異なる姿で現れるケースの実例としてご紹介させていただきました。お読みいただいた皆様にとって、何かの参考となれば幸いです。
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