霊能者秘密手記 私が手掛けた心霊事件 第3回 地縛霊、祟り神、樹霊、家霊 ~ 特定の場所にしがみつく悪霊と怨念 ①- 愛と霊の世界

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霊能者秘密手記 私が手掛けた心霊事件 第3回
縛霊、り神、霊、霊 ~ 特定の場所にしがみつく悪霊と怨念 ①

はじめに

霊能者、祈祷師、イタコや修験者など、霊的世界のプロフェッショナルたちが長年の経験のうちに遭遇したひときわ奇怪な心霊現象について語るこのコーナー、その第3回は決まった土地や場所、建物家屋などに憑依し続ける、<場を動かない霊>についての話です。そして被害者は、いずれも自分の意志でその場所に踏み込んでしまった第三者となります。

例えばそれは「魔の踏切」や「死の交差点」、あるいは「呪われた家」と噂される場所。地元をよく知る人々から忌避されている、いわく因縁に満ちた廃屋や公園、交通事故現場など、不吉な『祟り場』の噂は全国各地に山ほどあります。これを読まれている皆さんも、自分が住む地元でその手の話を聞いたことはありませんか?

また、そうした不気味な場所では心霊現象の噂だけではなく、様々な事故や事件が発生していることも多いものです。最悪、今でも何かのきっかけで死傷事故や事件が起きている…というケースも少なくありません。

事故や事件が多発する原因については、「元々、その土地の過去を探ると数々の不幸が起きている」、「先に同じ場所で命を落とした者の地縛霊の怨念が、新たな犠牲者を生み出すのではないか?」、「土地の気や風水の問題といった、正常な感覚や判断力を狂わせる何かが存在する」など様々な憶測が取り沙汰されますが大抵、真相は分からずじまいです。

もっとも仮にそれが分かったとしても、一般人には為す術がありません。そこでその道の専門家である霊能者や僧侶、神職などの出番となるわけですが…。

真偽のほどはひとまず置いても、まともな神経の持ち主であれば、そんな場所へ出向く愚行は犯しません。しかし、その一方で心霊スポットの肝試しや廃墟探検を趣味としているマニア、あるいはそれとは真逆に霊の存在をヒステリックに否定する唯物論者などは、他人が忌避するのをものともせずに自ら火中に飛び込んでいきます。

今回はそうした偏った考えを抱く人々が場所に住み着く邪霊と関わり合い、相応の報いを受けた顛末について、霊能者による客観的視点から語っていただきました。

地縛霊、祟り神、樹霊、家霊 ~ 特定の場所にしがみつく悪霊と怨念 ①

<場を動かない霊>のお話。その第1話は、不動産賃貸業の会社から委託され、瑕疵物件のお祓いをしている某霊能者から寄せられた体験談です。ある日、彼女は得意先からの依頼で、街中にある2棟建てのアパートへ向かったそうです。しかしそこで目の当たりにしたのは、今までの経験と知識では推し量れない、異例中の異例ともいえる霊の存在でした…。

「蛇地獄アパート」 【中編】

問題の物件に関わり合った人物のうちの1人は行方不明、そしてもう1人は自殺…この事実にショックを受けた霊能者。「ここで何を目撃したのか?」と同行した担当者を問い詰めると、ようやくその重い口が開く。「信じてもらえないかもしれないけれど、この目で見たんですよ。丸太棒ほどの太さがある、でっかい蛇の胴体が共用廊下をズルズルと通り過ぎていくのを…」

蛇地獄アパート 中編

「外へ出ようとしたら、アレがいたんですよ…。共用廊下をウネウネとくねりながら…」

「あの日はこの部屋の中を一通り調べてから、試しに真上の部屋へ行ってみました。そこの住人はとっくに勤めに出ている時刻ですから当然、ドアの鍵も閉まっていてね。でも清村が中にいるかもしれないと思って、ドア越しに呼び掛けたりしていたんです。そうしたら…」

「いたんですか?」

「いや、結論から言うといなかったんですがね。外からは人の気配を感じたわけです。一応、私もマスターキーは持って来たけれど、こういう場合に無断で入って良いものかどうかの判断がつかなくてね、いったん会社へ確認を取りました。で、部屋のすぐ前で電話していたら、いきなり内側から大きな音が聞こえてきて…」

それはスナックのママの証言通り、床の上で重量物を引き摺っているような騒音であったそうです。やがて会社から許可を得た大島さんは、ドアを解錠して室内へ踏み込みました。

「解せないことにね、玄関ドアを開けたとたん、それまで響いていた音がピタリと止んじまったんです。何じゃこりゃと思いながら入ったものの結局、部屋には誰もいなくてね。それでまた外へ出ようとドアを開いたら、ちょうどアレが共用廊下を通り過ぎていく様子が見えたんです」

「アレって何ですか?」

「…たぶん、ありゃ蛇です。丸太ん棒くらいの太さがある蛇の胴体みたいなモンが、ウネウネとくねりながら目の前を通り過ぎていきました。時間にしたら10秒か15秒くらいかな。今でもしっかりと目に焼き付いていますよ…」

そこまで言うと大島さんは、私の目をじっと覗き込んできました。

「信じてもらえますかね? …ていうか、先生ももう何か見えたり、感じたりしているんでしょう?もしそうだとしたら、そいつはひょっとして、私が見た大蛇と同じようなモンですか?」

「大きな蛇…ですか」

「そう、蛇です、蛇。正直、今までは幽霊が出る部屋のお祓いなんて、次の住人に安心してもらうためのオマジナイくらいの考えでした。でもこの物件はガチです!何しろ1人は首くくって、もう1人は行方不明になっちゃったんだから!…じつは清村が死んだ後、たまたまヤツのお袋さんと電話で話す機会があったんですが、物置小屋で首を吊っていた死体の真下にも、どっからか入り込んできた草蛇の群れが鎌首もたげて蠢いていたって…。で、私もアレを見ちまっているでしょう。だから自分も清村と同じ目に遭わないかと正直、怖いんですよ」

まるで特別な力に遮られているように、霊視のできない状況が続く

急に取り乱し始めた彼の様子を見て、こちらの胸中もさらにざわつきました。じつはこの時点ですでに私自身も、「この場所にはいたくない!」という思いで頭が一杯だったのです。お祓いや除霊の場数はそれなりに積んできたつもりなのですが、あれほど切迫した感覚に襲われたのは後にも先にもこの時だけです。

言葉では表現しづらいのですが、あえて言えば「それと知らずに鉄板の上に置かれて、下からジリジリと炙られているような感覚」でしょうか。とくに何事かが起きたというわけでもないし、窓の外はまだ明るくて周囲には人が住む家も見えるというのに、原因不明の焦燥が先立って居ても立ってもいられなくなったのです。

また、ここに至るまで何も霊視できずにいたというのも妙なことでした。問題がある物件ならば、あえて意識を集中しなくても、そこへ出向いただけで何かしら見えたり感じたりするものです。さらにこうした仕事ではその見えた物事を手掛かりに除霊や浄化の方法を考えるわけですが、そういうオーソドックスな手法がまず通用しないのです。

霊視、霊聴、霊感と自分の仕事道具がどれも働かず、終いには「ここにはこちらの能力を封じるような、特殊な力が働いているのかもしれない」と被害妄想のような考えまで浮かびました。

そんなこともあったので、ひとまずは大島さんの気持ちを落ち着かせ、こちらもよくよく落ち着いた上で残りの事情を聞かせてもらい、私の手に負える案件なのかどうかをあらためて判断し直そうと考えました。

「ねえ、大島さん、お互いに少し落ち着きましょう。私も最前からただならぬ気配を感じています。だけど、具体的に何かが見えるとかということは、まだ…。取りあえず話の続きを聞かせてください。それで、その蛇のような存在はその後どうなったのですか?」

「通り過ぎるのを待って、慌てて廊下に出た時にはもうどこかへ消えて無くなっていました。それで幻覚を見たんじゃないかと自分の頭を疑っていたわけなんですが、すぐ後でアレを見たのが私だけではなかったことが分かりまして」

「つまり、ここから次々と退去して行った借り主たちも、その日の大島さんと同じように蛇のオバケを見たということですか?」

「ええ、そうです。実際に退去理由を探ってみると皆、そういう話だったんです。寝ていたら天井からいきなり蛇が降ってきたとか、人の顔をした蛇が窓の外から覗いていたとか、デカい蛇にいきなり首を締めつけられて、再び気がついたらそれが消えていたとかね。とにかくどいつもこいつもヘビ、ヘビ、ヘビの一点張りで、中には他の住人が飼っているペットの蛇が逃げ出しているんじゃないかとか、工事の時に蛇の巣を潰した祟りだろうとか、そういう的外れの文句を言ってくるヤツもいましたが、生きている蛇は人が見ている前で消えたりはしませんからね、そのことに気づいた者から我先に逃げ出し始めて…」

夕刻近く、アパートへ帰ってきた1人の青年。その顔色は青ざめ、目だけが爛々と輝き…

その後は共有部分を中心に、アパートの全室をゆっくりと見て回ることになりました。空き室の番号を教えてもらって、預かったマスターキーを使いながら単独行動を採ったのですが、心身を苛んでくる異様な霊気はその場全体に遍在していて、とくにどの場所が強いかといったことは特定できませんでした。さらに付近には霊道に代表される霊的特異点なども存在せず、駐車場を含めた土地全体の気のポテンシャルもごく平凡なものでした。つまり、その辺りに垂れ込める謎の霊波動の発生源は最後まで分からずじまいだったのです。

おまけに、つい最近までアパートの掃除と管理を任されていた人と現地で直接、落ち合う段取りになっていたのに、その本人が約束をすっぽかすというアクシデントにまで見舞われました。大島さんから何度電話しても繋がらない始末で、具体的な情報収集についてもそこで手詰まりになってしまいました。

(どうしよう…。今までの経験が一切通用しない。正直、何が何だかよく分からない!恐ろしいモノが潜んでいることだけは確かなんだけど…)

私が途方に暮れている様子を見かねたのか、駐車場の隅でスマホを片手にタバコを吸っていた大島さんが、またこちらへ戻ってきました。

「ダメだ、電源ごと切ってるみたいです。いくら掛けても出やしない。先月雇ったばかりのバイトだったんですがね、それが2週間足らずで辞めちゃって。そいつ、この近くに住んでいるから、自転車かバイクですぐに来れるはずなんですよ。何を億劫がってんだか」

「ここに来るのも怖いっていうことなんでしょうね」

「まあ、そういうことなのかな。で、先生の方の調子はどうですか?」

「何とも言えません。祓うというのは、その祓う対象の正体が分かって、初めて功を奏するものですから…」

「じゃあ、結局、見えないってことですか?蛇のバケモノも何も?」

「その手の霊体は発する波動が人間とは違いますから、本来は簡単に分かるはずなんです。ですから、少なくともここにいるのは、そういう存在とも違う種類の霊ということになります。そうかといって、死んだ人間の幽霊や恨みの念などいった単純な心霊現象とも違いますし…」

「でも、どうして私やここに住んでいた連中にはアレが見えたのに、肝腎の先生には見えないんですかね。普通は逆だと思うんですが」

「見えるタイミングと言いますか、一定の条件が重なった状況下でだけ姿を現す存在なのかもしれません。申し訳ないのですが、このままでは私の手には余るというか…。もちろん形式的なお祓いはできますが、それで効果が出るという保証はありません」

「つまり、お手上げってことですか?弱ったな」

夕刻が迫る屋外で所在なく立ち話をしていると、急に背後から車が近づく音が聞こえました。振り返ると、折しも駐車場に停めた軽自動車の運転席から20代後半と思しき男性が降りてくるところでした。その姿が目に入るなり、私は息が止まりそうになりました。

軽めのショルダーバックを提げた、ジーンズにシャツ姿のラフな装い。容貌に目立った特徴のない、本当にどこにでもいるような青年だったのですが、ただひとつだけ違うのは、顔色がやけに悪くてやつれている感じがしたことでした。元からスリムな体型なのか、それとも心労で痩せたのかは分かりませんが、長い手脚は棒切れのように細く、動作も緩慢で疲れている風でした。それでいて双眸だけは爛々と光り輝き、一見して異様な雰囲気を発していたのです。もっとも私が死ぬほど驚いたのは彼の佇まい自体ではなくて、全く別の理由によるものでした…。

「僕、霊とかそっち系の話が大好きなんです!一時は心霊スポット巡りにもかなりハマっちゃって!」

青年は私のすぐ横をそのまま通り過ぎようとしましたが、それが急に踵(きびす)を返し、「お2人ともここの管理会社の方ですか?」と気安い口調で訊ねてきました。

大島さんは返答を躊躇っている様子でした。しかし、青年は構わずに言葉を重ね、

「あなたの顔、見覚えがありますよ。警察の人が事情を聞きに来た時、そのすぐ後ろにいた人じゃないですか。今日はどういう用件で?…あ、もしかして、ここをお祓いしに来たんですかっ?!」

「ちょっ、ちょっとアンタ、人聞きの悪いことを大声で…」

「そんなぁ~今さら隠したって、このアパートのことはもう隣近所でも有名なんだから。それにこういう流れになれば、最後はお坊さんとか霊能者とかに頼んで、お祓いしてもらうっていうのがお決まりのパターンだし…ああっ、そうか!そちらの方がそういう人なんですねっ?」

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた大島さんが、渋々ながらという態度で青年を私に紹介してきました。

「さっき、私らがいた部屋の真上に住んでいるKさんです」

「どうも、Kです。隣町にある△■の工場で、早番勤務で働いています」

「Kさんは出勤も早いけど、帰りも早いんだね」

「・・・・・」

大島さんが掛けた言葉を無視して、Kは私の顔ばかりを不躾に見つめていました。

「そうか…オバサン、本物の霊能者なんですね!スゴいな!僕も霊とか超常現象とか、そっち系のことが大好きなんですよ!自分に霊感は全然、ないんですけれどね。あはははっ」

この時、私は凄まじい悪寒に全身を襲われていて、じつは辛うじて立っているような状態だったのですが、それでもやっとのことで声を絞り出しました。

「あ…あの、あなた、ここに住んでいて怖くないの…?」

「えっ?全然。だって、僕の部屋には何も起きないし。それどころか、オバケの噂のおかげで家賃が下がって感謝しているくらいですよ。ねえ、そんなことより、もうお祓いの儀式は済んだんですか?もしもまだなら、見学させてもらっても良いですか!」

「ほ、本当に何も感じていないんですね…まるで平気っていうことなの…?」

「だから、言ったでしょう。僕、霊感ゼロなんですって。一時、心霊スポット巡りにかなりハマっちゃって、毎日のように出掛けましたけれど、怖い目に遭ったことはまだ一度もありません。1回で良いからこの目で幽霊を見たいって思っているんですが、いまだにその念願が果たせなくて。それでたまたまこういうアパートに住むことができたのに、それでもまだ見ることができないんですから、不運っていうか逆に悔しいくらいです。あはは…」

耳障りな笑い声が頭の中で反響し、悪寒もさらに酷くなって、とうとう耐えられなくなりました。私は大島さんの袖を引っ張ると、よろけながらその場を離れました。

[後編へ続く]

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